会計・税務

敷金、礼金はどう処理する?オフィスを借りたときの会計処理

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オフィスの移転は、会社にとって一大イベントですよね。

移転前には荷物の整理や梱包、移転後にはダンボールの開封や物の配置を考えたりと、大変なこともたくさん。

そんな中、経理担当者にとっても、移転の際の仕訳をきる、というのはなかなか厄介なものではないでしょうか。

(とかいう私もたまにしか出てこない処理ということもあり、処理の仕方を忘れがちです。。。)

そこで、オフィスを移転した際に必要な仕訳・会計処理をここで徹底解説します。

具体的な仕訳の全体像


まずは具体的な仕訳・会計処理を見てみましょう。

1.例題

下記の条件を前提としてみます。

・家賃    162,000円(税込)

・敷金    600,000円(償却150,000円)

・礼金    150,000円

・仲介手数料 162,000円

金額が大小などはさて置き、一般的な条件は上記のようなものになるかと思います。

では、この場合にどのように処理されるでしょうか?

2.仕訳

答えは以下のようになります。

前払費用       162,000 / 現預金   1,074,000

敷金         450,000 /

長期前払費用(敷金) 150,000 /

長期前払費用(礼金) 150,000 /

支払手数料      162,000 /

長期前払費用については、分かり易くするために括弧書きで内容を記載していますが、実際の仕訳を切るときの勘定科目は「長期前払費用」となりますね。

3.必要な仕訳の要素

では、この仕訳を切るためには、どのような知識が必要でしょうか?

これを下記の要素に分けて解説していきます。

Ⅰ.支払家賃の処理

Ⅱ.敷金の処理

Ⅲ.礼金の処理

Ⅳ.仲介手数料の処理

Ⅰ.支払家賃の処理

地代家賃     162,000 / 現預金    162,000

地代家賃については、通常「地代家賃」勘定や「支払家賃」勘定を使用します。

これは基本的な仕訳ですが、一般的に家賃は、翌月分を前月中に支払うことが多いことが注意点として挙げられます。

例えば、5月分の家賃を4月中に払った場合などです。この場合、上記の仕訳では十分ではありません。

ここで出てくる考え方が「発生主義」です。

発生主義とは、支払うこととなったサービスを受けたときに費用を計上する、という考え方です。

この例で言うと、支払った4月時点では、契約が開始されておらず借りた部屋を使用することができず、まだサービスを受けていません。

一方で、契約が開始する5月時点では、借りた部屋を使用することができ、サービスを受けていると言えます。

つまり、5月に初めて費用を計上することができるのです。

発生主義を考慮した際の仕訳は、下記のとおりとなります。
4月支払時

前払費用  162,000 / 現預金  162,000
5月発生時

地代家賃  162,000 / 前払費用 162,000

発生主義の考え方は、支払家賃に関わらず、費用全般に共通する考え方なので、覚えておきましょう。

Ⅱ.敷金の処理

個人で物件を借りるときにもよく目にするのが敷金です。

この敷金について基本的な概念から会計処理までを詳しく見てみましょう。

1.敷金とは?

敷金とは、法律用語で、不動産の賃貸借の際、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭である。

(Wikipedia)

敷金は、簡単に言えば、退去時にクリーニング代などの原状回復に係る費用を差し引いて返金されるお金を言います。つまり、クリーニング代などがかからなければ、将来全額返金されるお金のことです。

ただこの敷金には、実は2つの種類があるのです。それが下記のものです。

①将来返金される可能性のある部分

②初めから返金されないとわかる部分(敷引き、償却分など)

先ほど敷金は返金されるもの、と言いましたが、敷引きや償却と言われる部分については、始めから返金しないよ、という意味があるのです。

(見落としがちなので、しっかりと確認しましょう。)

2.会計処理

敷金については、まず①返金されるものか、②返金されないものかをチェックしましょう。

返金されるものかどうかについては、一般的に賃貸借契約書に書かれています。

①将来返金される可能性のある部分

敷金     450,000 / 現預金    450,000

敷金は、将来返金されるため、「投資その他の資産」の区分に資産として計上し、将来返金された際にその全額を取り崩すという処理を行います。

②初めから返金されないとわかる部分

敷金支払時

長期前払費用(敷金)  150,000 / 現預金   150,000
償却時

長期前払費用償却    75,000  / 長期前払費用(敷金)75,000

賃貸借契約書に「敷引き○ヶ月」や、「償却○ヶ月」などが記載されている部分については、返金されません。

つまり、資産としては価値が残らないため、全額を費用とする処理になります。簡単に言えば、将来返金されないとわかっているのに、「敷金」などの資産に残しておくのはおかしいよね、ということです。

では、支払った時にすべて費用としてしまって問題ないでしょうか?

答えはNoです。

実際の会計処理は、返金されない敷金をいったん資産として計上し、償却期間にわたって少しずつ減少させることで、最終的にゼロとする処理を行うのです。

これはそもそもの会計の考え方が影響しています。会計では、なるべく月ごとのブレがないように、つまり、毎月安定して費用を計上することが求められており、その一例がこの敷金の償却なのです。

よって、会計上、返金されない敷金を償却期間にわたって償却させ、価値を減少させる仕訳をきります。
敷金(初めから返金されないとわかる部分)の償却期間

敷金の償却期間は、通常5年となります。

これは、敷金のうち償却される分は、税務上の繰延資産に該当するためです。

税務上の繰延資産には、いくつか種類があるのですが、敷金の場合、通常初回契約時に1度支払い、その後の追加の支払いはありません。

税務上、「更新料を支払わない繰延資産」の償却期間は5年となっており、今回の敷金についても5年の償却期間となります。

☆ステップアップ

税務上は5年と定められていますが、会計では経済的実態、つまり現実的な期間を見ます。

例えば、1年後に退去することがわかっている場合、税務上はあくまで5年で償却されますが、会計では1年で償却することになります。

上場企業などでは、会計と税務の償却期間が異なる場合があるので注意しましょう。

Ⅲ.礼金

敷金と同じくよく見かける礼金です。敷金とまとめて「敷礼」と言ったりもします。

1.礼金とは?

礼金とは、主に関東地方において、不動産の賃貸借契約の締結の際に賃借人が賃貸人に対して支払う一回払いの料金である。原則として返還されるべき敷金や保証金、建築協力金などとは異なる。

2.会計処理

先ほど説明した敷金の②初めから返金されないとわかる部分と同じです。
礼金支払時

長期前払費用(礼金)  150,000 / 現預金   150,000
償却時

長期前払費用償却    30,000  / 長期前払費用(礼金)30,000

☆少額な長期前払費用について

初めから返ってこないとわかっている敷金や礼金の金額が20万円未満のとき、一時の費用とすることができます。

具体的には、長期前払費用に計上することなく、「支払手数料」などの科目でその時点の費用として良いということです。

基本的に会計では先ほど言ったように、なるべく月ごとのブレがないように費用を計上します。ただし、金額がそこまで大きくないものについては、影響があまりなく、また金額が大きくないものを5年間にわたって償却するのは、単に事務処理が煩雑なだけです。

そのため、20万円未満のものについては、一括で費用としてしまって問題ない、という規定が定められています。

なお、注意点としては、20万円未満かどうかの判定は、礼金、敷金償却のそれぞれの金額ではなく、その契約で支出した礼金・敷金償却などの合計額で判定するので、注意してください。

Ⅳ.仲介手数料の処理

支払手数料    162,000 / 現預金    162,000

仲介手数料については、通常「支払手数料」で処理します。
豆知識

オフィスを借りる場合、スタートアップ企業などでは、自宅兼オフィスとして、自宅をオフィスにするケースも多いですよね。

このときに問題になりがちなのが、「自宅をオフィスとして使用して良いか」。

通常、住居用の賃貸物件は、オフィスとして使用することを想定しておらず、賃貸借契約書にも住居用としか書かれていません。オフィスとして使用する場合、税務署からの書類や各社からのDMなど、郵送物で溢れかえってしまいます。

ポストを見たら郵便物で溢れかえっていた、ということにならないよう、自宅兼オフィスにするときには、管理業者やオーナーさんの許可をもらうようにしましょう。

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